夢見館の物語
プロローグ- 「綺麗な蝶、白く光っているよ。本当にお花畑に行くのか、ついて行ってみようよ」
「もう帰ろうよ、お花畑の楡の木には恐い悪魔が住んでいて、満月の夜には絶対に行っ ちゃいけないって言われているだろう?それに光る蝶を見ていると、いつの間にか 自分も蝶になっちゃうんだって」
「悪魔なんていないって言ったのは、お兄ちゃんじゃない」
「待てよ、待てったら」
蝶に誘われるように野原を走る妹を追って辿り着いた場所は、昨日までは確かに無かった筈の、古びた洋館の前庭。扉をくぐって屋敷に入ったとき、そこは閉鎖された異世界となった。
●システム&内容
全てを動画と音声で表現したアドベンチャーゲーム。グラフィック切り替え式のものと異なり、移動やアイテムの取得もアニメーションで滑らかに表示されます。とはいえ屋敷内を自由に動き回れる所まで行かず、ポイント間の移動に留まるのはハードの限界でしょう。
内容的には、それほど奇をてらってはいません。外界との交流が途絶した閉鎖空間という設定は、古来からのホラーやミステリーの定番ですし、情報やアイテムを得て目的(ここでは妹の救出)を達成するというのも、極くオーソドックスなものです。またADVの常である、謎が解らずストーリーが進行できないという状態を回避するために「黒い絵」というヒントを配しているのも、ゲームとしての謎解きよりも雰囲気を楽しんでもらいたいという事だと思います。
●感想
やはりリアルタイム動画を売り物にした「ナイトトラップ」と同時期にリリースされたこのソフトは、MEGAーCDの特長である連続動画再生機能をフルに使用しており、蝶の動きなど「艶かしさ」を感じます。移動時の視線の位置は、子供の目の高さに設定され、階段の昇降など何でもないような所でもドキっとさせてくれます。
色数が少なく、ドットの荒い画面のMDですが、このゲームでは逆に雰囲気を醸し出すのに一役買っているといえば言い過ぎでしょうか?
唯一の例外を除いて、少年に直接の危害を加えるものはありません。システム的に類似している「Dの食卓」が、死体や効果音などで直截的な「恐怖」を演出しているのに対して、「夢見館」では精神に忍び込んでくる「怖さ」を訴えかけてきます。
スプラッターに対するサイコホラーと言えるでしょうか。キャッチコピーである「静寂の恐怖が息を潜める」は、実に的確な表現だと思います。蝶の標本を見たときは、本当に背筋に冷たさを感じました。
マッチの隠し場所に納得いかない(解答は常に提示されているにも係わらずそれに気付かせない、というのが最良と考えます)のと、時間制限の中での扉探しが冗長だと思いますが、十分及第点を与えられる作品です。
少年が大人になり挫折を知ったとき、再びここへ戻りたいと思うだろうか?
それとも、失意の中から更なる一歩を踏み出そうとするのだろうか?
願わくば後者であらん事を。
(かいぶん)
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